2010年05月10日

もっと知りたいウユニ塩湖のリチウム

 世界が注目しているリチウム資源の宝庫ウユニ塩湖。
 
 今日は、その採掘方法についてもっと詳しい情報をご紹介します。

 リチウムと言えばもっとも軽い金属。従って、地中から採掘すると考えがちですが、現実は全く違います。

 2009年5月、エボ・モラレス大統領は、ウユニのリオ・グランデにおいて、ウユニ塩湖の蒸発岩鉱物(minerales evaporíticos)に由来する炭酸リチウム精製のためのパイロット・プラントの定礎式を行ないました。このプラントでは、塩田から塩を採るのと同じような方式が採用されているようです。私がウユニに行ったときは、湖面の水位が高いため、リオ・グランデまで行くことができなかったので、行ったことのある人から聞いた話です。

 ウユニ塩湖のリチユム採掘は次のような方法で行われています。

1.まず、塩湖の干潟の部分を深さ40~50cm掘削します。掘削した穴には、塩湖の塩水が染み出して水たまりになります。

2.この水をくみ上げ、乾燥池に引き込み、天日で乾燥させます。何ともシンプルな方法です。

 作業はこれだけです。塩水の中や塩湖の干潟、湖底の泥の中にリチウムが含まれています。表層部分は塩化ナトリウムの層が主体なため、これをはぎ取ると、周囲から水に溶けた濃度の高いリチウムが染み出してくる、という構図のようです。当然、塩湖の塩水の中にも含まれますが、上の方法がリチウムを高濃度で抽出するのに適しているようです。
「えっ、金属のリチウムが水に溶けるの?」と思ったのですが、ウユニ塩湖のリチユムは、海水と同様に塩化リチウムの形で蓄積されているので、水溶性のようです。ネットで調べるとリチウムはあまり水に溶けないようですが。

 この天日乾燥の方式は、環境破壊を最小限に抑える優れた方式ですが、4段階の乾燥過程が終わるのに数ヶ月要するとか。

 本格的な精製プラント受注競争にどの国が勝つか分かりませんが、大量の塩水を汲み上げ、大量の燃料を使って乾燥させることになるので、環境汚染が心配です。標高の高いウユニで燃料を燃やすと、不完全燃焼のため大量のススが出ます。それが塩湖の表面に降り注ぐことになるのではないかと心配しています。  

【追記】この競争には韓国が勝ちました。ボリビア政府の提示に対し、具体的な抽出プランと実験成果を短期間で提出したのが評価されたようです。 ついでに、ボリビア政府が独自に行っていたリチウムの抽出試験は、惨憺たる結果で、抽出効率が悪いことが明らかになりました。

 さて、このウユニ塩湖は誰の持ち物なのでしょうか。実はCOFADENA(国家開発国軍公社)の所有になっているようです。*1 ウユニ塩湖の開発では必ず出てくる名前です。

 次に、ボリビアのリチウムの埋蔵量は、誰が計算したのでしょうか。

 一般的には、米国地質調査所(USGS)のデータを皆が使っています。しかし、その基本データは、Dr. Saulが行った調査結果に基づいているようです。

 ウユニ塩湖の鉱物資源の調査は、ボリビア人研究者によってたくさん行われていますが、埋蔵量の算定は、1986年にPh.Dr. Saul J. EscaleraがCOFADENAの依頼を受けて行ったものがあります。この結果、塩化ナトリウム(1,410トン)、塩化カリウム(110百万トン)、塩化リチウム(5.5百万トン)と算定されました。*1

 リチウムの埋蔵量についての日本語の資料では、JETROが公表している「世界の国別リチウム鉱生産・確認埋蔵量」の表があります。これは、米国地質調査所(USGS)ミネラル・コモディティ・サマリーズを基にJETROが作成したものだそうです。この表でおもしろいと思ったのは、2007年公表のものと2009年公表のものとを比較すると、内容が全然違うということです。

 JETROの「世界の国別リチウム鉱生産・確認埋蔵量(2007年)」*2では、世界の埋蔵量合計が11,000,000t、うちボリビアは5,400,000tとなっています。世界の埋蔵量の半分がボリビアにあるということになります。

 一方、「世界の国別リチウム鉱生産・確認埋蔵量(2009年)」*3では、世界の埋蔵量合計が9,900,000 tで、ボリビアは空欄です。世界の埋蔵量の半分?を占めるボリビアが空欄では、世界の埋蔵量の表としては不適切です。

【出典】
*1:Saul J. Escalera, Ph.D., “SALAR DE UYUNI: UN GIGANTE EVAPORITICO QUE RECIEN DESPIERTA!”, Octubre 2009, http://www.cedla.org/obie/content/4976
*2: JETRO, http://www.jetro.go.jp/world/cs_america/cl/stats/pdf/lithium.pdf
*3: JETRO, http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000198/lithium.pdf

 出典(*3)のJETROのレポートを読んで感じたのは、リチウムの需要は思っていたほど逼迫しているわけではないということです。ボリビアのリチウムに世界が注目しているのは事実でしょうが、チリのアタカマ塩湖などから産出されるリチウムの方が、いろいろな意味で低コストで生産が可能となっていることを初めて知りました。ウユニ塩湖の塩水はマグネシウム量が多いので、これが抽出の障害になるようです。一方、アタカマ塩湖のリチウムはマグネシウムなどの不純物が少ないそうです。



【追記です】

 実は、この記事を書いた元々の理由は、ポトシ県にあるトーマス・フリアス自治大学の投稿論文を雑誌で見つけたので、その中に詳しいことが書かれていると思ったからです。ところが、これを読んでみてもよく分からない。ちょっとがっかりしました。

 塩湖の塩水をポンプで汲み上げ、円錐形に張ったビニールシートのテントに散布し、早期乾燥・抽出を図る方式を提案しているようですが、図の意味がよく分かりません。分かるように書いて欲しいものです。

 塩湖のアルカリ水(かん水)からリチウムを商業ベースで抽出しているのは、肥料生産で世界的シェアを占めるチリのSQMという会社。リチウム抽出作業の過程で採れる硝酸カリウムを肥料として販売しているようです。

 ウユニ塩湖のリチウムについては、本館でも別の記事をアップしています。よろしかったらご覧ください。


posted by ネコ師 at 05:33| Comment(0) | メモ | 更新情報をチェックする
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