2016年09月05日

どこまで進化するのか? 海水に依存しない驚きの養殖システム、好適環境水の謎


 2016年7月31日に録画した番組を観ていたら面白い内容をやっていたので紹介します。

 放送局は「TOKYO MX2」。地方局では観られないと思います。番組名は、「ギョギョ!?海を知らない魚たち 〜不思議な水が未来を変える〜」です。タイトルを見て、さかなクンが出てくるのかと思ったら全然出てこない。

 内容をザックリ言うとこんな感じ。

 真水に低濃度の「カルシウムとカリウム、ナトリウム」を加えた「好適環境水」により、水の交換なしに、海から離れた山の中でも海の魚を養殖することに成功。

 番組のHPでは、番組概要を以下のように記載しています。

放送局TOKYO MX2
放送時間2016/07/31 15:00 〜 2016/07/31 15:55(55分)
番組名 「ギョギョ!?海を知らない魚たち 〜不思議な水が未来を変える〜」
番組概要海水でも淡水でもない不思議な水、好適環境水で育った海を知らない魚たちが、あなたの未来を豊かにする…好適環境水育ちの魚って!?
番組詳細海水でも淡水でもない不思議な水こと「好適環境水」は、海に囲まれた豊富な漁業資源に恵まれた日本の漁業界に革命をもたらすかも知れない…。海水に含まれ る約60種類の成分のうち、魚に必要なのはわずか数種類のミネラルをわずかに溶かした限りなく真水に近い人工の水「好適環境水」は、岡山理科大学で開発。 同大で研究が進む陸上養殖法は、政府が成長戦略の一環として進める「パッケージ型インフラ輸出」につながる可能性を秘め、業界内はもちろんJICA国際協力 機構からも注目を浴び、タイやラオス、カンボジアのエビ養殖場での利用も視野にプロジェクトが進んでいる。およそ10年に及ぶ取材取材の集大成だ。

    Source: TOKYO MX2 ホームページ

 岡山理科大学工学部准教授の山本俊政氏が、海水に依存しない養殖システムを確立したという成功ストーリーを追った番組になっています。2011年頃から追っかけていたようです。

 この「好適環境水」に関係する技術のすごいところは、海水を使わずに海の魚を養殖する技術を確立させたこと。これまでに、トラフグ、ウナギ、マグロの養殖に成功しているそうです。そして、研究段階ではなく、出荷段階に入っていること。技術が確立されてきた証でしょう。

 さらに、「好適環境水」で育った魚は、浸透圧調節によるストレスが少ないために成長が早く、味も美味しい。加えて、養殖では不可欠な抗生物質の投入も必要なく、まさに良いことずくめの養殖技術であること。

 ミドリムシから作られるユーグレナのタンパク質(アミノ酸)、ナノバブルの技術を組み合わせれば、すごいことができそうです。宇宙船のような閉鎖環境の中で、魚を養殖しながら目的の星まで旅する。そんな時代が来るかも。

 魚の養殖技術はどこまで進化するのだろう。

 抗生剤たっぷりの環境の中で育った料亭の「生け簀(いけす)」の中の魚は、鮮度は良いけど「シャブ漬け」状態。これに対し、好適環境水で育った抗生剤を使っていない魚はやはり魅力的です。

 抗生剤の怖さは、病原菌が抗生剤が効かないようにどんどん進化し、抗生剤が効かない病原菌が増えていることにあります。抗生剤は使わないに越したことはない。いざというときに、抗生剤が効かないということは避けたい。誰でも考えることでしょう。

 山本俊政氏が所属する岡山理科大学ってどんな大学なんだろう。調べてみると、学校法人加計学園が運営しているようです。特許について検索すると、山本俊政氏名の特許11件のうち10件は、学校法人加計学園が筆頭出願人になっています。

 管理人は、特許に詳しくないのですが、「好適環境水」は特許認定されているので閲覧可能です。これで特許が通るのですから、・・・。この特許には少し問題がありそうな気がします。脇を固めないと危ない気がします。

  http://www.kake.ac.jp/patent/pdf/2010-166927.pdf

 この世の中は不思議なもので、旧帝国大学の教授が発表した説には誰も異論を唱えませんが、知名度低い大学准教授の業績には一言言いたい人が何人かいるようです。肩書きで判断してしまうからなのでしょうね。「好適環境水」の仕組みは以前から知られていたようなことを書いている人もいます。じゃあ、なぜ、先に特許を取らなかったの?

 このような状況は、科研費にも反映しているように思います。この研究は産官学一体となって推進する価値があるように思います。

 この番組の制作・著作は「KSB瀬戸内海放送」になっています。TOKYO MX2が制作した番組ではないようです。

Source YouTube, "好適環境水 誕生秘話 "、岡山理科大学

好適環境水とは、そして、それを使った養殖とは何か?

 改めて、『好適環境水』とは何かについて書きたいと思います。

 魚の浸透圧調整に関わるナトリウム、カリウム、カルシウムの3つの成分に着目し、その最適な濃度を特定。この 3成分のわずかな濃度の電解質を淡水に加えるだけの『世界一安い海水』が『好適環境水』とされています。好適環境水の価格は人工海水の10分の1で、塩分濃度が通常より低い。魚が体内で浸透圧調整をするという負担がなくなるため、魚が早く大きく育つようです。

 養殖漁業を行う上での最大の問題が病気の発生。これはどうしても避けられないものと考えられていました。近海の「生け簀」で養殖を行う場合でも病気は発生し、時には全滅してしまうことも。

 陸上の「生け簀」で養殖する場合は、大量の海水を必要とし、定期的に海水を入れ替えて、きれいな状態を保つ必要があります。ところが、そのコストは膨大なものになる。

 『好適環境水』は、自然界にある海水を必要としないため、値段が安く、さらに、病気の発生を抑えられるという大きなメリットがあります。これは、『好適環境水』の中では病原菌が増殖できないということのようです。

 この特性を活かし、陸上の生けすで、抗生物質等の薬剤を使わず養殖することが可能になりました。まさに、驚くべき技術です。

 ここでいう『技術』とは、好適環境水のことばかりを指すのではなく、養殖技術全般を指します。そもそも、陸上での海水魚の養殖は難しく、だけも手がけてこなかった、いや、手がけることさえできなかった、とても困難なものでした。

 養殖に使う海水のコストを下げ、病気の発生を防ぐことができたからといって、すべての問題が解決した分けではなく、様々な難しい問題に直面したようです。

 それを一つ一つ解決することにより、養殖魚の出荷に漕ぎつけた。驚くべきことをやっている人がいるものだと感動しました。

 観賞魚を飼っている一部の人は、好適環境水の仕組みは周知のことで驚くには値しない、と考えているようです。

 管理人がこの技術を評価する理由は、実証できたということ。ネットで目先だけのつまらないコメントを知ったか顔で書く人って、こういう仕事を一度もやったことのない人なのだろうと思います。

 アイデアだけではだめ。実証試験を行うために必要となることは山ほどあります。実証試験を行うための資金はどうするのか。施設はどう設計するのか。飼育員はどうするのか。マーケットはどうするのか。などなど。これらの課題をクリアできたからこそ養殖魚の出荷まで漕ぎつけることができた。管理人が評価するのはこの部分です。

 「そんなの知っているよ」は「できない証」。知識・情報に対する謙虚さが必要なのかも。

【出典】
 『産学官連携ジャーナル』 2013年9月号


posted by ネコ師 at 05:40 | Comment(0) | サイエンス・テクノロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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